「叔母さんのお使いで、どうもすみません。」と、年子はいいました。窓から、あちらに遠くの森の頂が見えるお教室で、英語を先生から習ったのでした。 きけば、先生は、小さい時分にお父さんをおなくしになって、お母さんの手で育ったのでした。だから、この世の中の苦労も知っていらっしゃれば、また、どことなく、そのお姿に、さびしいところがありました。 「私は、からだが、そう強いほうではないし、それに故郷は寒いんですから、帰りたくはないけれど、どうしても帰るようになるかもしれないのよ。」 ある日、先生は、こんなことをおっしゃいました。そのとき、年子は、どんなに驚いたでしょう。それよりも、どんなに悲しかったでしょう。 「先生、お別れするのはいや。いつまでもこっちにいらしてね。」と、年子は、しぜんに熱い涙がわくのを覚えました。見ると先生のお目にも涙が光っていました。 「ええ、なりたけどこへもいきませんわ。」 こう先生は、おっしゃいました。けれど、先生のお母さんと、弟さんとが、田舎の町にいらして、先生のお帰りを待っていられるのを、年子は先生から承ったのでした。 また、先生のお母さんと、弟さんは、その町にあった、教会堂の番人をなさっていることも知ったのでした。 山形 歯医者 足下へも寄り付けない
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