「大丈夫で御座いますよ」と小虎は云いつつ颯と紺蛇の目の雨傘を開いた。それと同時に腰巻の唐縮緬から、血の飛沫が八方へ散ったと見たのは、今まで藤蔓に止まっていた赤蜻蛉が、驚いて逃げたので有った。 名は新利根でも、五十間の堀割。手繰り渡しの藤蔓を綱渡りの足取りで越すので有った。それは実に見事なもので、大道を普通の人が歩くのと異らなかった。 折柄の夕陽は横斜に小虎の半身を赤々と照らした。それが流れの鈍い水の面にも写るので有った。上にも小虎、下にも小虎、一人が二人に割れて見えた。垢染みた浴衣の扮装も、斯うすると光輝を放って見えるので有った。況してや舞台好みの文金高島田、化粧をした顔の美艶、竜次郎は恍惚たらざるを得なかった。もう途中で落ちはせぬかという懸念は無く成ったが、あの儘自分だけで渡り終って、先を急ぐとて独で行って了いはせぬか。それが気遣われるばかりで有った。 やがて其半途まで綱渡りを進めた。両岸からは如何に高く藤蔓を張っても、其中心に当る点は、自然々々にたるみが出来て水面近く垂れているので有った。それに人の身の重量が加わったので、危く水に漬りそうにまで成った。それすら小虎は巧みに越した。もう其難場は越したので、一息吐くかと思う頃。 「あっ」 小虎の鋭い叫びと殆ど同時に、巌畳に綯ってある藤蔓縄が、ぷつりと断れた。小虎は水音凄まじく新利根の堀割に落ちた。竜次郎の驚きは絶頂に達した。 プラセンタ 高純度・高濃度プラセンタサプリ ? レダのプレミアムプラセンタ プラピュア ...
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