蒸し暑い晩だ。 月もいいし、狭いキャビンに帰ってしまうのが惜しくって、つい夜を更してしまった。寝苦しいと見えて、一度寝に帰って行った人々までがまた甲板へ上って来たりしていたがいつの間にか皆各自の室へ引きとってしまって、残っているのは私一人きりだった。 「そろそろ寝るかな」時計を出してみた。「ホウ、もう一時だ!」 私は立ち上って続けさまに欠伸をしながら、両手を高く伸した。そのついでにチョッキの上から自分の胴中をちょっと触ってみた。出発以来これが癖になってしまって、日に何度となくやる。大切な暗号を胴中に巻いているのだもの。任地に着いて無事にそれを手渡しするまでは安心がならない、従って責任はなかなか重く少しの油断も出来ないのだ。我々の生活は旅行中だけが呑気で極楽だのに、その旅行中さえこんなに緊張していなければならないなんて、考えてみると情けなくなっちまう。好きなダンスもやれないし、バアへ行くのも差控えているのだ。三十歳の若さだのに、と私は急に詰らなくなった。
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