「あッ、もう、どうしようのう」 思わず知らず、口走った。大名の権威も、女子の謹慎も、共に忘れて了ったのであった。 「誰そ、早う……あ……もう、絶入るばかりじゃ。誰そ来てたもれ」 常ならば次の間の笹尾が真先に起きて来るものを、疲れ切ってか、眠りから覚めなかった。宿直の侍女もどうしたのか、二人ともそれを聴かぬらしい。こっちへ来ようとはしなかった。 「誰そ、誰そ」 高田殿の悩みの声。 「はッ、何御用に御座りまするか」 絹張の丸行燈の下に、両手を突いて頭を下げた少女を、高田殿は蚊帳越しに見た。それはどうやら給仕に出た本陣の娘らしく思われたのであった。 「おう、能う来てくれやった。さッ、早う。その方でも苦しゅうない。ここへ来て、毒虫に螫された後の、手当をしてくれやいのう」
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