まえから幾らか酒がいけ、飲むと平常と違ってよくしゃべる女ではあったが今日は加奈子に久しぶりで逢った亢奮からまた余計にしゃべり度いらしかった。
――もっとも素直には鬼奴らはあたしを家から出しませんからね。あんかを蹴っくり返しましてね。あいつらが周章てて騒いでるうちに家を飛び出しましたよ。跣足ですよ。そして最初裁判所だと思って飛び込んだのが海軍省でしてね。
――おばさん、此頃毎日お酒なんか飲むの。
お琴は二つ三つわざと舌打ちして見せて、
――ええ、えい、毎日お酒も飲みますしね。亭主も持ちますしね。は は は は は。
「おばさんひらけたのね」
そこへ洋服に鞄を抱えて気が重そうな若い小男が入って来た。
――お前さん、お帰りかい。あなた、これがうちのです。
その男は横目でお琴のコップを睨みながら、気まずそうに頭を下げた。
――むかしっからよくごひいきにして頂いたんだよ。よくお叩頭してお礼を言いなさいよ。
それから加奈子に向って、
――この人、生意気に頭なんか分けてるんですよ、お婆の、かみさん持ってるくせに。
若い小男は急に頭を持上げて小声で怒鳴った。
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