行者も横目にその箱をのぞいて、これもにわかに顔の色を変えた。傍にひかえている藤江も伸びあがって一と目みて、身をふるわせるように驚いたらしかった。半七が神前に奉納した箱のなかには、泥だらけの古草履が入れてあった。 「こなたの母には何か付き物がしているとか云うが、こなたにも付き物がしているらしい」と、式部の声はだんだんに尖って来た。「当座のいたずらか、但しは仔細あってのことか。いずれにしても怪しからぬ儀、御神罰を蒙らぬうちに早くお起ちなさい」 「お叱りは重々恐れ入りました」と、半七はあざ笑った。「併しそこにおいでになる行者様は何もかも見透しの尊いお方だとうけたまわって居ります。それほどのお偉いお方がその箱のなかにどんな物がはいっているか、初めからお判りになりませんでしたろうか」 式部もすこし返事に詰まっていると、半七は畳みかけて云った。 「その通り、どんなものでも蓋がしてあれば判らない。そのお手際じゃあ、ここにいる人間もどんなものだか判りますまいね」 豊中 インプラント Ass without hiding head hiding
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