tomosibi
  Gosinpai
 
「旦那様、御心配なさいますな。私が船を取って参ります。向河岸まで行くのは、何んの仔細は御座いません」と事も無気に小虎が云った。 「えっ、船を取りに向河岸へ行く」 「私は女軽業師、幸い斯うして、彼方から此方へ、藤蔓が引渡して御座いますから、それを伝って行けば何んでも無い事で御座います」 「成程なあ」  普通の者には出来ぬ芸だが、女軽業師の小虎としては、何んの造作も無いので有った。一座を脱出する時に、変り易い秋の空を気遣って、手当り次第に雨傘を持出したのが、図らず此所で役に立った。太夫身支度の間今一囃子、そんな景気を附けるでもなく、唯浴衣の裾を端折っただけで有った。赤の色褪めた唐縮緬の腰巻が、新堀割の濁った水の色や、小堤下の泥の色に反映して、意外に美しく引立って見えるので有った。  忽ち手繰り船の親杭の上に攀じ登った。 「気を着けないと危いよ」と、下から竜次郎は声を掛けた。 保健師募集 千葉県保健師等修学資金貸付制度/千葉県
 
 
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