多分お父さんとお嬢さんだろう、どこやら面ざしが似ている。男の方は少し前屈みで背がひょろ高かった。顔はまだ若い、それだのに頭髪は真白だった。 お嬢さんは二十四か五か、桃色の支那服がいかにも奇麗で可愛らしく見えた。しかしこれは病人らしく思えた。小柄で恐しく痩せて蒼白い顔をしているが、非常な美婦人だ。惜しいことに余りにも全身衰弱しきっていて、歩くことさえ大儀そうで、見ていても痛々しく窶れ果てている。 席につく時軽く会釈しながら、ちらりと目を上げて私の方を見た。その眼の奇麗さにまず驚いてしまった。体は、疾くに死んでいるのに、目だけが生きている、といった感じだが、その寂しい美しさが私の心を掻き乱すのだった。今までにこれほど恐しい魅力のある眼に出会った事がなかった。私は彼女の一瞥にすっかり魂を奪われてしまったと云ってもよかった。 食事がすんでから、一人で甲板の上をぶらぶら散歩していた。どうも今見た二人が気に懸ってならない。食事が済んだら必ず甲板に出て来るだろう。と心待ちにしていたがなかなかやって来なかった。病人だから室へ帰っているかも知れない。私は何となく物足りないような気がした。 Windows 8 wiki 可惜花を散らす
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