tomosibi
  odaiba
 
 だが、ついにおそれた、その日がきました。せめてもの思い出にと、年子は、先生とお別れする前にいっしょに郊外を散歩したのであります。 「先生、ここはどこでしょうか。」  知らない、文化住宅のたくさんあるところへ出たときに、年子はこうたずねました。 「さあ、私もはじめてなところなの。どこだってかまいませんわ。こうして楽しくお話しながら歩いているんですもの。」 「ええ、もっと、もっと歩きましょうね、先生」  ふたりは、丘を下りかけていました。水のような空に、葉のない小枝が、美しく差し交じっていました。 「私が帰ったら、お休みにきっといらっしゃいね。」と、先生がおっしゃいました。  年子は、あちらの、水色の空の下の、だいだい色に見えてなつかしいかなたが、先生のお国であろうと考えたから、 「きっと、先生におあいにまいります。」と、お約束をしたのです。すると、そのとき、先生は年子の手を堅くお握りなさいました。 「たとえ、遠いたって、ここから二筋の線路が私の町までつづいているのよ。汽車にさえ乗れば、ひとりでにつれていってくれるのですもの。」  そうおっしゃって、先生の黒いひとみは、同じだいだい色の空にとまったのでした。  流れるものは、水ばかりではありません。なつかしい上野先生がお国に帰られてから三年になります。その間に、おたよりをいただいたとき、北の国の星の光が、青いということが重ねて書いてありました。そして、雪の凍る寒い静かな夜の、神秘なことが書いてありました。お台場 歯医者 仇を恩で報いる
 
 
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