有名な潜水鉄球に依る探海家であり、且つ医師であるロバトスン博士は、八百米の深海に助手と共に降りて行つた。 前面硝子を通して、一尾の奇怪な軟体動物を発見した、博士は早速助手に命じて、鉄球内から照光器の光りを、この動物にむけ、照らし出させ、しきりにこの深海動物の動作を視察したのであつた。 この動物は、一個の頭と四本の足とをもつてゐて、何か枕様の物体に、その頭をのせ呻吟してゐる風であつたが、博士はこの動物が蛸であるといふ見極めをつけるのに、かなり長い時間をかけなければならなかつた。 『博士、蛸にしては肢が四本よりありませんが――』 『××助手、彼奴には立派に八本の足があつたのさ、よく注意してごらん、ほら根元から千切れた痕が四ヶ所あるだらう』 『ぢやあ、何かに喰ひ千切られたわけですか』 『さうだよ、鱶か何か鋭利な歯をもつたものにねつまり深海に於ける階級闘争に負けたのだよ』 『ほう、そして何故あゝ身悶へして転んで許りゐるのでせう』 『つまり頭が大きすぎるのだよ、頭が自由主義だが、足の行動が伴はないといふわけさハハハハ』 『博士、アンコーの群が泳いできましたよ』 ミシェルマカロン通販 後の雁が先になる_みう
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